きみの友だち

060607.jpg今、重松清さんの『きみの友だち』という小説を読んでいる。重松さんには、今年3月にインタビューをさせていただく機会があり、興味深い話の数々をじかに聞かせていただいただけに、とても身近に思える小説家さんの一人。数ヶ月前に『ビタミンF』と『トワイライト』を読んで以来、久々に重松作品を手に取ったのだが、まだ完読していないものの、この人の凄さをまざまざと思い知らされてしまった。

『きみの友だち』は、10作の物語を収めた短編集で、いずれの作品も子どもが主人公となっている。そして、それら10の物語の主人公は、互いにクラスメイトだったり友だちだったりする。すなわち、10の短編は、子ども社会を舞台にした大きな物語ともなっている。
一つのクラスには、実に色々な子どもがいる。ガキ大将もいれば秀才もいる。お調子者もいれば無愛想な一匹狼もいる。『きみの友だち』は、こうした個性豊かな子ども一人ひとりにスポットを当て、その心情を描写し、彼や彼女がどうしてそう生きるのか、どうしてそう振舞うのかを、その背景等を縁取りながら、リアルに描いた作品と言える。

多くの人間は、他人との間に壁を感じ、自ら壁を作る。そこには理解できない絶望的な溝があるものと思い込んでいる。でも、実際はそうした壁の向こうにいる人間が、実は自分と何ら変わらない、弱くて情けくて愛すべき一人の人間であったりするんじゃないか。この作品には、そんなメッセージが込められているように思う。

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