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随分前のことだが、友人のライターがある著名人に名刺を差し出したところ、それを「ポイッ」と机の上に放り投げられたとの話を聞いた。私はその著名人(政治家)が、昔から思想的にも人間的にもあまり好きではなかったので、その話を聞いた時には、強烈な不快感を覚えたものだった。いくら両者の「立場に差」があるからといって、一人の人間としてやって良い事と悪い事があるではないか。
…と、この間、そんな話を知人にしたところ「そんな人、珍しくないですよ」と言われてしまった。特に「営業」の世界では、そんな無礼極まりない行為をする人間が、少なからずいるのだという。私はにわかに信じられなかったが、恐らく、私が比較的恵まれた道を歩いてきているだけの話なんだろう。そんな話、ヤクザな世界でしかないと考えていた自分の認識を改めねばならない。
私は元来ガマン強い方で、滅多なことで人間や世の中に幻滅したりはしない。だが、名刺を放り投げるヤツがごまんといると思うと、さすがに遣る瀬無い気持ちになってしまう。人間とは、これほどにも心の狭い、小さき存在なのか。この歳になっても青臭さが抜けない私は、たとえ美味しい話が転がっていようとも、そんなヤツとは絶対に仕事をしたくない。