2007年04月23日

070423.jpg今から1年くらい前の話だが、事務所のチャイムが鳴り、ドアを開けてみると一人のスーツ姿の男性が立っていた。年齢的には20代前半といったところであろうか。シワ一つない小奇麗なスーツを見る限り、ひょっとしたら大学を出たばかりの新卒社員かもしれない。「○○という会社の者ですけど」と、1枚の名刺を私に差し出してきた。

その会社は、私の知る限り、あまり評判のよろしくない、どちらかと言えば悪名高き、「先物取引」の企業であった。すぐに断ろうとしたものの、彼のまっすぐな視線に押され、部屋に通して30分あまり話を聞く羽目になった。いかにも「マニュアル通り」といった感じの退屈な説明を繰り返し、彼はわざとらしい笑顔と共に事務所を去った。

彼自身、本気でその商品を良かれと思って勧めているのか、はたまた自らに魔法をかけているのか。真意は定かではないが、彼の所作の一つひとつに、仕込まれた何かを感じ、憂鬱な気持ちになった。だが、一体誰が彼を責めることができるだろうか。一生懸命勉強し、いっぱしの大学に入り、人並みに就職活動をし、内定をもらった会社がたまたまそんな企業だったのかもしれない。

もちろん「先物取引」そのものを否定するわけではないが、彼自身が社会でその業界をどう認知されているのか、それすらも知らない可能性だってあろう。一生懸命に、前向きに生きて来た人間ほど、世の中の仕組みは見えづらいものなのかもしれない。