「音楽」を考える作曲家と脳科学者の対話

070612.jpg世の中には様々な「音楽」があふれている。ジャンルの好みは異なるにせよ、ほとんどの人には何かしら好きな音楽があるだろう。最近、そんな「音楽」を通して、作曲家と脳科学者とが興味深い対話をしている『音楽を「考える」』という題の新書に出会った。ここでほんの少しだけ紹介したいと思う。

この本は対話形式で書かれているが、一人目の語り手、作曲家の江村哲二は、まず、「作曲」という行為の、「物理的な空気の振動による音ではなく、自分の内からのそれを聴いてなされる不思議」に気付く。これは作曲家でない人間にとっても、何かアイディアを出すとき、「いまここに物理的に存在しない音や色や形などを確かに認識する感覚」として共通する経験ではないだろうか。

では、そのような、”実存しない、アイディアそのもの”とは、一体どこにあるのだろうか―?
ここで登場するのが、江村と対話する脳科学者、茂木健一郎の仕事である。脳科学者に言わせれば、先の質問への答えは簡単。ズバリ、脳内にある神経細胞である。しかし、十分な知識や経験がないところには、神経細胞への刺激があってもアイディアが生み出されることはないという。

音楽を「聴く」ことの不思議やオーケストラの美しさの謎。現代日本の音楽教育への意見。「世間」と「創造(作品?)」との間の現実的な制約。話題はさまざまに発展し、人間の創造性から生命哲学へとすすんでいく。個人的に作曲と脳科学に興味があっため、題名だけを見て衝動買いしたのだが、かなり楽しめた一冊だ。

(彼ら2人に”通じている”という、「本物」への志向。既に間違った別の何かしか内包されていない人間かもしれない自分。そして確かめる術がどこにもない不幸中の幸い。突然の、江村さんの訃報に、案外時間ってないのかもと思う。)←結局最後に独り言が出てしまいました。反省。