年齢を表記するかどうか

 私は今年で32歳になりました。と書くと、私の年齢を知らない人の中には、「えっ~!」と驚く方がいるかも知れません。昔からそうなのですが、どうも私は年齢よりも数歳上に見られるケースが多く、実年齢を告げると「落ち着いているね」と、いつもお決まりの褒め言葉(?)を頂戴します。大学時代、アルバイトで『ザ・テレビジョン』という雑誌の記者をしていたことがあるのですが、取材先で「佐藤さんは27~8歳くらいですか」と聞かれ、さすがにショックを受けたことがありました。当時、私は19歳でしたが、実年齢を告げると相手に恥をかかせてしまうと思い、とっさに「24です」と答えてしまったのが、今でも苦々しい思い出として残っています。
 そんな私も、最近は「年齢が上に見られるのは有り難い事だ」と思うようになりました。仕事柄、小中学校の管理職や大学の研究者、新聞社や出版社の方々などとのお付き合いが多いのですが、その殆どは私よりもずっと年上の大先輩方です。私が実年齢より上に見られることで、そうした方々が年齢的な近さと親近感を覚えてくれるのなら、多少なりとも老けて見えることほど有り難い事はないでしょう。

 何故こんな話をするかというと、先日ライターの方々との集まりで「年齢の表記」が話題になったからです。
 新聞や雑誌の場合、人名の後ろにカッコ付で年齢を表記します。「○○社の営業部長・○○氏(55)が売上金を着服…」「歌手・○○(23)が新曲を発表…」といった具合です。もちろん、記事によっては年齢を表記していないものもありますが、新聞の社会面をはじめ、表記する媒体は多く、読者もそれを当たり前のものとして読み流しています。
 年齢を表記する理由としては、「人物のイメージが明確になる」「読者が自分の年齢と重ね合わせられる」などがその主だったものでしょう。凶悪犯の年齢が分かれば、読者はその人物像をより明確に描くことができます。例えば、20歳が起こした殺人と60歳が起こした殺人とでは、事件の性質も動機も背景も異なるでしょうし、年齢表記が無いと、読者は問題の本質を読み取ることができなくなってしまいます。その点で、年齢表記には一定の意義があると私は考えます。
 一方で、タレントや作家などの中には、年齢表記を嫌う人もいます。「別に年齢を表記する必要があるのか」というのが、そうした方々の主張です。確かに、実力で勝負する人たちにとって、年齢は20であろうと40であろうと、無関係なのは事実でしょう。
 でも、逆に「年齢表記がイヤな理由は何?」と聞かれたら、その人たちは何と答えるのでしょう。推測するに、年齢を隠したがる背景には、実年齢に対する不必要なコンプレックスがあるのだと思います。「お幾つですか?」と聞くと、「女性に年齢を聞くの~?」と冗談めかした答えが返ってくる背景には「若く見られたい」という深層心理があるのでしょう。逆に、ビジネスマンの男性の中には「ベテランに見られたい」との理由で、年齢を隠す人がいるかもしれません。
 私は「年齢は無関係」「だからこそオープンにすべき」と考えているので、年齢を隠したがる行為にはある種の不快感を覚えます。ただ、世間には、好奇の目で人の年齢を探り、人の価値を年齢という尺度で決めてかかろうとする人が多いのも事実で、まずはこの辺の意識を変えていく必要があるのでしょう。
 今の世の中、出身地を隠そうとする人はほとんどいません。それは、出身地に対する偏見を持つ人が皆無に近いからなのでしょう。年齢も同様になったらいいな、と考えるのは理想論でしょうか。

 〔2004.8.1 弊社代表・佐藤明彦〕