子どもの目線でものをとらえる

澤田です。
すっかり梅雨も明け、東京は連日恐ろしいほどの猛暑となっていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

数ヶ月前、絵本や児童書を発行している某有名出版社とお仕事をご一緒させていただく機会に恵まれ、現在、小学生を対象とした児童学習書の制作に携わらせていただいております。内容は、今はなき『科学と学習』に近いものがあり、身の回りの社会の仕組みや科学の現象をわかりやすく、楽しく解説するというものです。

制作にあたっては、メーカーの商品開発部に取材に行ったり、研究者とお話をさせていただいたりと、非常に勉強になることが多く、作っていてとても楽しいです。がしかし、小学生向きとあって、文章表現や使用できる単語の制約がとにかく多い!これまではどちらかといえば、教育関係者を対象とした専門書ばかり書いてきたこともあってか、知らず知らずのうちに熟語を連発してしまい、「もっと文章を柔らかく!」と何度も注意される始末でした。

例えば、ある商品の制作工程を説明したこんな文章。
「牛乳に含まれている脂肪分は、そのままの状態では他の成分と分離する性質があるため、機械で細分化し、成分を均質化する必要がある」
これをこんな風に変えます。
「牛乳には、脂肪という成分が含まれている。脂肪は、そのままにしておくとほかの成分と分かれて、表面に浮いてきてしまう性質がある。そのため機械で脂肪を細かくくだいて、ほかの成分とよく混ぜ合わせてあげる必要がある」

つまり、センテンスをできるだけ短く区切ること、そして「分離」や「細分化」といった熟語は使用せず、「分かれる」「細かくする」など、明快でわかりすい表現に置き換えてあげることが必要なのです。

熟語は、限られた文字量で多くの情報を伝えなければならない場合、文章を圧縮するのに非常に有効な表現方法です。しかし今回、小学生を想定とした文章を作成していく中で、いかに自分が熟語に頼っていたか、つまり「わかったつもり」になっていたかということを思い知らされました。熟語を頻発すれば、いかにも硬質で高度な文章を演出することができますが、それは全くの誤解であり、むしろそのような文章は熟語という大樹によりかかった軟弱な文章なのだという気がします。文章の熟語を極力取りのぞいた後に表出するディティールの鮮やかさ、力強さというものに、ハッと気付かされる毎日です。

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