誤用の一般化 その1「ぶ然」

佐藤です。

ようやくスタートした「スタッフブログ2」ですが、私の担当は毎週月曜日、テーマは「日本語雑学よもやま話」と「Teachers Online制作日記」です。

「日本語雑学」なんぞ堅苦しいテーマを選んだのは、少しは編集プロダクションらしく、誰が読んでも役に立つ情報を盛り込みたいと思ったからです。大した話は書けないかもしれませんが、日常のちょっとしたコネタになればと思いますので、お付き合いください。
さて、第1回目は「誤用の一般化」について。いきなり難しい話をして恐縮の限りです。

私はスポーツ観戦が大好きで、よくYahoo!のスポーツニュースをチェックしています。そこで昨日、こんな見出しを見ました。

「オレがひじ打ち?長谷部一発レッドにぶ然」

ご存じの方も多いと思いますが、ここで使われている「ぶ然」は、本来的な意味からは外れています。

ぶ然.jpg「ぶ然」は元来、「失望してぼんやりしている様子」のことを指します。「父の訃報を聞いて、しばしぶ然とした」などが、用例としてあげられます。でも、最近は多くの人が「ぶ然=腹を立ててムッとする」と覚えているように思います。一般紙は分かりませんが、スポーツ新聞などは、公然とそうした使い方をしているところが少なくありません。

でも、「ぶ然」の「ぶ」は漢字だと「憮」。すなわち「心」を「無」くしたことを意味しているはずです。なのに、なぜこんな誤用が広く行き渡ってしまったのでしょうか。

でも、新聞が使うということは、ひょっとしたら「誤用の一般化」が起きたのではないか・・・と思い、辞書で調べてみました。すると、

(1)思いどおりにならなくて不満なさま。
(2)落胆するさま。
(3)事の意外さに驚くさま。

と一番目に挙げられているではないですか!

しばし「ぶ然」としてしまいました・・・。

おそらく、元来型の「ぶ然」は今後、「ぼう然」に置き換わっていくのでしょう。つくづく、言葉は生き物なんだなぁと思います。

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